潤さんの見送りを終えた今の時間はちょうど11時。

そろそろ昼食の用意をしようと、台所の壁にかけてある水色のエプロンを身に付け、キッチンの前に立つ。

あたしはチャーハンでも作ろうかと、冷蔵庫から卵と玉ねぎ。青ねぎにウィンナーをまな板の上に並べた。

すると、その光景を目にした祈ちゃんは、シンクとあたしの間にするりと入り、背伸びをしてまな板にある食材の中にウィンナーの存在に気がついた。


「あのねあのね、イノ。たこさんウィンナたべたい!」

どうやら祈ちゃんは、あたしお手製のタコの形に切ったウィンナーを気に入ってくれたらしい。

幼稚園がない今日もこうしてお昼ご飯にリクエストしてくれる。

たったそれだけの要望が、あたしを必要だと言ってくれているみたいでとても嬉しい。


――本当はチャーハンにはウィンナーを刻んで入れた方が食べやすいんだけれど、彼女がそう言ってくれるのならと、あたしはひとつ微笑むと同意のシルシに大きくうなずいた。


「やったぁ!! イノ、たくさんウィンナーねっ!!」


あたしとシンクの間から抜け出た祈ちゃんはバンザイをするとすぐに近くにある4人掛けテーブルとセットになっている椅子に座った。

まだ用意する段階なのに、もうテーブルにつく彼女はとても食欲旺盛(ショクヨクオウセイ)だ。

その光景がとても可愛らしくて思わずくすりと笑ってしまう。