隣にある撮影室へと向かえば、中にはすでにモデルがいた。
腰まである長く艶やかな髪は真っ直ぐで、とても綺麗だ。
細い体をしていながら、身長はぼくより少し低いぐらいで、女性にしてはかなり高い方だと思う。
彼女は腰が締まったチョコレート色のワンピースに身を包み、撮影のセットである桃色のソファーに腰掛けていた。
その姿を目にしただけでもかなりの美人だということがわかる。
顔は……と、彼女を見つめると、細い目をさらに細くして、赤い唇から真っ白い歯を見せて笑ってくれた。
彼女はフランス人形さながらの美人だ。
ええっと、彼女の名前は……なんだったかな?
極端に他人に興味がわかないぼくはいつもこんな調子だ。
モデルの名前は忘れてしまったが、たしか彼女は今、映画にコマーシャルと引っ張りだこの売れっ子モデルだ。
その彼女を被写体にして、レンズ越しから覗く。
彼女にソファーの上で寝転んでもらったり、肘をついて座ってもらったりと様々なポーズをとってもらい、休憩を何度か挟みながらもぶっ通しでシャッターをきり続けた。
そんな中、壁際に控えている彼女のマネージャーはひっきりなしに呼び出される電話に出て、応答を繰り返していた。
……電話。
ぼくは頭に過ぎったその二文字で、忘れかけていた、やらなければならないとても重要なことを思い出した。
重要なことというのは、明日と明後日以降の――つまり幼稚園が休日になっている土日についてだ。