なにせ美樹ちゃんは、血の繋がった実の親のぼくでさえも手を焼くとてつもないワガママで負けん気が強い祈と根気強く、しかも対等に渡り合える唯一の女性なのだ。



その彼女がぼくの代わりを努めてくれることについて不安なのは、彼女がどうのということではなく、もちろん幼稚園への行き道を知らないということでもない。


祈が通う『かなりあ幼稚園』への道筋は、ぼくと同居するようになってから毎日のように何度も一緒に祈を迎えに行っているから大丈夫だ。


ぼくが心配しているのは彼女の体調だった。


それは5日前、彼女はぼくと出会ったその日に熱を出していたんだ。


いくら元気そうに見えたとしても、たった数日前の出来事だ。あまり気は抜けない。



彼女は自分の健康よりも与えられた恩の方を優先してしまう性格だ。

彼女は、そう。

とても働き者だった。



ぼくの家に無償で世話になっているからと、家事のほとんどを手伝い、祈の弁当を作ってくれている。

今日だって、急遽仕事が入ってしまったぼくの分の弁当までも作ってくれたんだ。

しかも彼女が作る弁当は冷凍食品なんかではなく、きちんとした食材を使っている。


彼女はそうやって、朝昼晩の食事の用意と、今までぼくができなかった分野を受け持ち、こなしてくれる。


その上、ぼくに頼ろうともしない。

ぼくが仕事で留守にしている日中は、就職先を探しているらしかった。


ぼくとしては、あんなことがあった直後だから、無理なく安静にさせてあげたいというのが本音だ。

しかし、それでもやはりぼくにとって仕事は家庭と同じくらい大切なものだ。