彼女は、なんと付き合っていた男性と真剣に結婚を考えていた矢先、相手に家庭があることを告げられ、振られてしまったらしい。

その男性はなんと次期社長候補で、かなり会社からも期待されているという。

おかげで彼女は1年前から勤めていた会社をクビにされてしまった。

しかも彼女の家は社宅で、住む家さえも失った。


法的処置を取れば、おそらくはなんとかなる事柄だろうが、それには弁護側と何度も話し合いをしなければならないし、当然相手側にも弁護がつく。

裁判を通じて互いが対決する時間とその問題に向かうための気力を要するのも事実だ。


今の美樹ちゃんではとてもではないがその問題に立ち向かうだけの体力と気力もなさそうだ。


そういういろいろな経緯があり、彼女はぼくの家に居候をすることになった。

そんな美樹ちゃんの性格は、相手男性の肩なんか持ちたくはないが、たしかについ手を出したくなるほどの可憐さと健気な一面を持っていた。

しかも、ここぞという時は自分の意見を曲げない芯の強さもある。

その中で、時折垣間見せる弱さもあり、それがきっと男心をくすぐるのだろう。


そして彼女が可愛らしいのは性格だけではなく、容姿もだった。


二重の大きな目と真ん中にある小さな鼻。

小ぶりでふっくらとしている唇は衝動的にキスをしたくなってしまうほどだ。


ぼくよりも4歳年下の彼女はまさにぼくの理想のタイプそのものだ。


そして、祈にとってはことさらに理想の母親像なのかもしれない。