静かな部屋にそれだけが響く中、それを止めたのは潤さんだった。


彼は信じられないことを口にしたんだ。


その信じられないことっていうのは……。





「ねぇ、行く場所がないなら家においで。

ぼくならかまわないし、祈にかぎっては大歓迎だ」





って――……。


彼は今、なんと言ったんだろう……。

なんだかとても思いがけないことを言われたような気がする……。


あたしは潤さんの言葉を理解できなくて、口を閉ざす。

だけど潤さんは、あたしが何か発言しないと口を開けてくれないみたい。


おかげであたしの嗚咽はすっかり消え去り、今度こそ沈黙が部屋を包んだ。


でも、何を言えばいいの?

潤さんが言った話の内容がわからない。


あたしは返事の代わりに顔を上げ、彼の顔を見つめる。


その瞬間、息を飲んでしまった。


あたしがそうなったのは、彼があまりにも優しい微笑みを向けていたからだ。

目を細め、弧を描く唇……。


その優しい潤さんの表情で、さっき彼が言った言葉を良いように解釈してしまいそうになる。


『家においで』なんて会って間もない、しかもあたしのことを知りもしない人がそんなことを言うはずがない。


きっと、さっきのはあたしが勝手に翻訳しただけだ。


それに、彼には祈ちゃんっていうとっても可愛い子供さんがいる。