火遊びじゃなきゃ、いったい誰が田舎から出てきた野暮ったいあたしなんかと付き合うだろう。

誰もあたしなんかを相手にするはずないのに……。


あたしはバカだ。

自分の立場をまるで理解していなかった。


あたしは可愛くも美人でもないのに、慶介から告げられる『可愛い』を信じこみ、彼の火遊びにどっぷり浸かっていたんだ。


本当に相手のことを想っているなら、この先のことを考えているなら、慶介の短所もきちんと見ておかなければいけなかったのに……。


ゆっくり話すあたしの言葉を、潤さんはうなずいて聞いてくれる。


まるで、あたしのすべてを受け入れようとしてくれるみたいに、反論もしないで力強い腕に閉じ込めてくれる。


「ここ、ね。社宅だから近いうち追い出されるの……。

慶介は会社にとって貴重な財産みたいなものだから、変な噂がたつと会社の経営に支障が出るって……クビって言われた……住む家も失くなっちゃうんだ」


……きっとね、会社がクビになるのも赤ちゃんの件も、家庭裁判に持ち込めばなんとかなるんだと思う。

だけど、裁判沙汰になれば気力と体力が必要になる。

今のあたしにはそれに耐え得る力はない。

ここから出て行くしか残された道はないんだ。



だからもう、こんなどうしようもない奴を相手しなくてもいい。

潤さんにそう言おうとするのに、ダメだ。

それを言う気力すら残っていない。


これからのことを考えれば、とてつもなく大きな不安が押し寄せてくる。

口からはまた嗚咽が漏れはじめる。