今のあたしは少し前までものすごく泣いていたから、顔は涙でびしょ濡れだし、鼻水だって流れていて、正直、綺麗なんていう言葉とはかけ離れていると思う。
それなのに、潤さんは水浸しな顔を見ても眉をハの字にして微笑む。
彼の茶色い瞳が絶望に打ちひしがれたあたしの顔を映していた。
もしかして、潤さんは絶望に暮れるあたしを心配して追いかけて来てくれたの?
潤さんも慶介と同じで、体だけの関係を求めているんだと思った。
だから熱を出したあたしを看病したんだとそう思い、たくさんひどいことを言った。
潤さんは純粋にあたしを助けようとしてくれただけなのに……。
彼はこんなにも優しいのに……。
見返りなんて求めず、あたしの側にいてくれているのに……。
それなのに、この優しい男性を慶介と同じだと思ってしまった。
潤さんはけっして汚らわしくはない。
汚いのは彼じゃない。
いくら気づかなかったとはいえ、結果的に家庭を持つ彼と不倫をしていたあたし……。
ああ、そうだ。
誰よりも一番汚らしいのは、このあたしだ。
それなのに、あたしは自分のことを棚に上げて、心優しい潤さんにひどいことを言ってしまった。
『ベッドの上でなら愛してるくらい言ってあげる……』
あんなことを言う資格なんて、あたしにはないのに!!
……ごめんなさい。
「ごめっ、なさいっ」
あたしはなんて愚(オロ)かな人間なのだろう。