「ふっ…………」


ズキン、ズキンと痛むのは、あたしの心と赤ちゃんがいるお腹だ。


「も、さいあく……」

絶望へと追いこまれたあたしは、また泣きはじめた。


全身が悲しみで冷たくなっていくのがわかる……。

体が冷えきって、死んでしまうんじゃないかというくらい寒い――……。


絶望という黒いものがあたしを覆った、その時だった。

ふいに冷え切ったあたしの体が熱を持った力強い腕に包まれた。

それはあまりにも突然で、とてもびっくりしたから、目から流れ続ける滝のような涙は引っこんだ。

それと同時に、言葉ではとても言いあらわせないほどの恐怖が襲ってきたんだ。


『それ』はあたしの背後から両手を巻きつけ、体を動けないように縛ってくる。



――ああ、どうしよう。



家に戻った時、鍵をかけなかったから泥棒か変出者が入って来たのかもしれない。

そういえば、回覧板では空き巣に注意と書かれていた。


ここは夜と朝方は極端に人通りが少なく、人々の喧騒とは無縁の場所だった。ひったくりや変出者がよく出没するらしい。



もしかして、あたし……殺されちゃうの?

だってあたし、赤ちゃんの顔だって見てないんだよ?




そんなのいやだ。

そりゃ、死にたいって思ったけれど、あれはそれくらいの苦しみがあるっていうだけで、本当に死にたかったわけじゃない。

心から本当にそう思うなら、あたしはもうとっくにこの世にはいない。