side:Miki Morimoto



最悪、最低、こんなことってない。

潤(ジュン)さんや祈(イノリ)ちゃんと別れて孤独だと思った直後に慶介(ケイスケ)の奥さんに待ち伏せされるなんて、ほんとさいあく。


社宅に戻ったあたしは家の鍵をかけることさえもせず、玄関から廊下まで一直線上に伸びている寝室を目指す。

廊下の途中では洗面所やバスルームがあるけれど、そんなものはおかまいなしだ。

部屋に入るとベッドに倒れこむようにして突っ伏した。



絶望が胃へと押し上げ、嗚咽(オエツ)と一緒にあたしの口から飛び出ると、熱くなった目頭で涙が流れていく……。


枕に顔をうずめ、今朝からずっと我慢してきた悲しみを吐き出す。


大きな口を開けてむせび泣く声と、目からたくさんの涙がこぼれ落ちていくのが自分でもよくわかった。

その声と滝のような涙は枕に吸収されていく――……。


絶望が絶望を呼び、深い悲しみがあたしの中に入ってくる。


……叩かれた頬が痛い。





苦しい、悲しい。

……慶介と一緒になれると思った。

あたしの中に宿った赤ちゃんを一緒に抱きしめて、喜んで……笑い合って……。

素敵な家族ができると夢見ていた。

慶介となら、そうなれると信じていた。


……なのに、それは違った。


慶介はただの火遊びのつもりであたしと寝て、ごみクズ同然に捨てた。

あたしのお腹にいる赤ちゃんごと……。