……なんだ、これ。
自分でもわからない感情に、正直焦る。
その疑問を解消するためにも彼女を探さなければならない。
ぼくは大粒の涙を大きな目に浮かべた祈の頭に手を置き、きっと見つかると無言で祈と自分にそう、言い聞かせた。
そして、うなだれた祈の小さな手を握り、美樹ちゃんの悲しそうな後ろ姿を探す。
……たしか、この近辺のつくりは……。
ああ、そうだ。
右手は工業地帯で左手が住宅街だったはずだ。
ぼくは焦りながらもこの周辺の地図を頭に思い浮かべ、おそらく美樹ちゃんが消えただろう左手へと歩を進めた。
景色は大きな道路から一変して静かな住宅地になる。
植物がところどころ植えられているものの、5階建てマンションが左右に立ち並ぶその場所は工業地帯に負けないほど、とても機械的な場所のように思えた。
ええと、春日1丁目……16……。
美樹ちゃんが言っていた住所を記憶の断片を探り、祈と共に近辺を歩く。
「…………なさいよ!!」
すると、どこからだろう。
静かな朝には不似合いなほどの女性のヒステリックな声がどこからか聞こえてきた。
ぼくは祈の小さな手を握りしめたまま、声がする方角へと進む。
そうしたのは、美樹ちゃんと関係がありそうだと心のどこかでそう思ったからだ。



