ああ、だから祈。道路は飛び出しちゃいけないだろう!!
そう思うぼくも負けじと駐車場から飛び出した。
「パパ、はやくはやく!!」
急かす祈はぼくよりもはるか1メートル先を走っている。
なんだって子供ってあんなにすばしっこいんだろう。
息が上がっているぼくをよそに、祈の足は加速する一方だ。
直線状に伸びた道路に向かって走り続ける祈は、だがきちんと交差点で止まってくれた。
どんな時でも信号を守る祈はさすがだ。
内心安心したぼくは、立ち止まった祈とやっと合流を果たすことができた。
目の前に大きなトラックが騒音と排気ガスをまき散らして横切る。
耳障りな音に両耳を塞ぐ祈は、ぼくのほっとする気持ちとは裏腹でご機嫌斜めだ。
大きなトラックが通り過ぎたタイミングを見計らうかのように信号はまもなく青に変わった。
だが――。
「いない。おねいちゃん、いないよ!!」
ぼくたちの視線の先には美樹ちゃんはいなかった。
「いない……どこぉ?」
悲しそうな声に視線を向ければ、祈は今にも泣き出しそうな顔になっていた。
大きな目には大量の涙がたまっていく――。
祈、お前はなぜそこまで美樹ちゃんを思える?
一昨日までは赤の他人だったじゃないか。
それなのになぜ、彼女をそこまで信じることができる?
そう思うのに、ぼく自身さえも彼女がいなくなったと感じれば何とも言えないとても切ない気持ちになった。



