「うん!」

祈はにっこり微笑み、勝ち誇ったかのようにうなずいた。

ぼくはその姿を見てさらに敗北感を味わった。

なんたってぼく自身ですら今すぐ彼女の背中を追いたいと思っていたのだ。

それを祈に代弁されたんだ。


しかも、だ。

ちょうど曲がり角のところには都合よく有料駐車場まである。


なんというグッドタイミングだろう。


神様はどうあっても祈の味方をするらしい。

重い足取りで去っていく美樹ちゃんの背中を目の端でとらえながら、ぼくは駐車場へと車を走らせた。


間もなくして車を駐車場に停め終える。

すると祈はすぐさま自分の体をおさえつけているシートベルトを忌々(イマイマ)しそうに頭から引っこ抜いた。


ぼくは一刻も早く車から出ようとする祈に駆け寄り、ドアを開けると身軽な彼女を車から降ろす。


ええっと、車のロックを確認して……。

って、あれ?

祈!?


気がつくとぼくの足元にいるはずの祈がいなくなっていた。

焦ったぼくは視線を左右に巡らせ、彼女を探す。

すると、小さな体はすでに駐車場の出口に向かっていた。



「祈、走るな、危ないから!!」

ああ、もう!!

子供って、なんでああも身軽なんだ?


ぼくは急いで祈がいる出口へと走った。

「パパ、はやく!! おねいちゃん、みえなくなっちゃう!!」

振り返りそう言うと、祈は追いつこうとするぼくから逃げるようにして走り出す。