気がつけば小岩井は再び学校の屋上に居た。
 「夢?」
 小岩井がそう呟きに歌舞伎沢兄
 「夢じゃないよ」
 と回答する。
 「全くね、あんな事態になるなんて誰が予想したかな」
 「誰も予想しないよー」
 歌舞伎沢兄妹達はそんな会話を繰り広げ、溜息を吐く。
 「ねえねえ、結局何があったの?」
 小池は二人の会話に割り込む。
 歌舞伎沢兄は再び溜息を吐きながら完全に呆れたという回答をする。
 「すこーし、過去を変えるだけのはずだったんだけど、そこの人、自分の前世を殺してしまいました」
 その発言に小岩井は
 「えっ!? 何それ!! 聞いてないんだけど!」
と飛び起きて歌舞伎沢兄ガタガタと揺らす。
 「まあまあ、蜘蛛嫌いは治ったんだし、結果オーライですよ」
 歌舞伎沢妹はその言葉と共に小岩井の肩をぽんぽんと叩いたのだった。

 その後、彼の蜘蛛嫌いは確かに治ったときく。
 しかし、その代わりに小岩井は閉所恐怖症になったとか、ならないとか……
 取り敢えず、今も学校内には小岩井の「大橋ー助けてー」という声が聞こえない日はない。

 過去は安易に変えて良い物ではないとよくわかったのではないでしょうか?