甘い旋律で狂わせて

どうして、知りあいだなんて言ったんだろう。


婚約者って答えるべきなのに。


考えるより先に、口が嘘の言葉を吐いていた。


ネオにこんな嘘を言って、あたしは一体どういうつもりだろう。


自分でも、よくわからなかった。


これじゃ、まるで悠貴を裏切っているみたい。



「とても哀しそうな表情だったから、気になったんだ」


そう言って、ネオはあたしの顔を覗きこんだ。



「哀しそうだった?あたしが?」


「ああ。哀しそうに、海を見つめていたから」



ネオに、何もかも見透かされているような気がした。


あの船上で初めて会った人のはずなのに、どうしてだろう。


あたしのすべてを知っているような感覚。


あたしの心の奥に巣食う哀しみも、すべてわかっているような……