甘い旋律で狂わせて

「先生みたいな人、宝の持ち腐れって言うんだよ?こんなふうに無名のまま、私みたいなピアニストの影に隠れちゃうなんて、もったいない」



彼女の言葉があまりにもストレートで、ここからはネオの顔色が見えないから余計に胸がドクンドクンと激しく音を立てた。



ネオはいったいどんな顔をしているんだろうと、気が気じゃない。



だけど、そんなあたしの心配をよそに、ネオは小さく笑い声を立てて彼女に向き直った。



「葵。そんな意味のない質問はここまでだ。僕はキミを影で支え、輝かせるのが仕事。キミもそれを望んでるだろう?」

「でも、私は・・・」

「大事な時期だ。そんなことはいいから、しっかりと明日のことだけを考えるんだ。いいね?」



諭すようにネオは言い、彼女は仕方ないように口をつぐんだ。


「わかったわ。とにかく、明日が待ってるものね。じゃあ、また明日ね。先生」



納得いかないような様子だけれど、彼女は言い聞かせるようにそう言って、ステージから立ち去って行った。