甘い旋律で狂わせて

キイと微かに軋む音を立て、扉が開く。


それと同時にあたしの目に飛び込んできたのは、とても懐かしい光景だった。



誰もいない客席の端から見える、眩いほどに明るいステージ。


光の溢れるその場所には、とても立派なグランドピアノと


そして……



「しっかりと自分の耳で音を聴いてごらん。そうだ、子犬が草原を駆けるように、愛らしく」




聞き慣れた声が、美しいワルツとともに耳に届く。



その声は、どれほどに時がたってもこの耳を甘く擽る。



誰よりも愛おしい人の、声……。




「ネオ……」




隣にいる薫さんでさえ聞こえないくらいの、小さな声であたしはその名を呼んでいた。