甘い旋律で狂わせて

薫さんは慣れたように、駐車場に車を停めて関係者専用の入り口からホールに入った。


ホールの裏側が、垣間見えるバックヤード。


その通路にはいくつか部屋があり、騒がしく人が出入りしていた。



「明日からちょうど、プロのピアニストのソロコンサートがあるの」



薫さんはあたしを誘導するように歩き、すれ違う人に会釈しながらそう言った。



「彼らはそのスタッフたち。あたしも何度かお世話になってるんだけどね」


「そうなんですか。薫さんって、すごい人なんですね」



そうだ、薫さんはプロのバイオリニスト。


何度もこういう場所でバイオリンを弾いてきたんだろう。