甘い旋律で狂わせて

「そうだったんですか……」


だから、ずっと永都先生の話をしていたんだ。


まるで今でも生きているかのように、あんなふうに話していたんだ。



「その代わりに、ネオのことを一切口にしなくなったのよ」


「ネオのことを?どうしてですか?」


「母がネオにピアノをやめさせた時から、あの二人の関係はずっと修復されていないのよ。ネオは大好きなピアノをやめさせられて、代わりに永都がピアノでどんどん世に出ていって……

あれからネオは家に帰らなくなった。きっと、居場所がなくなったと感じていたんでしょうね」


薫さんはのどかな窓の外の風景を眺めながら、ため息をついた。



「母とネオはね、永都が亡くなってからはたった一度しか会ってない。」


「……たった一度?」



どうして?

たった一度だなんて


家族なのに……


「母とネオが久々に顔を合わせたのは、永都が亡くなってからすぐのことだった」


薫さんは口ごもりながらも、決意したように

あたしに顔を向けた。