甘い旋律で狂わせて

エレベーターを降りて、薫さんは白い廊下を歩いていく。


どこもかしこも真っ白で、並んだドアはどこも閉ざされていた。



とても静かで、シンとした療養所だ。



薫さんは、どうしてこの場所にあたしを連れてきたんだろう?


どうしてお母さまのところに……



そう、考えていたその時



「お母さん!」



そう叫んで突然足を速めた薫さんの視線の先には

つきあたりの大きな窓の前に静かに腰をおろしている、白髪頭の中年の女性がいた。