甘い旋律で狂わせて

「さあ、降りて」


薫さんに促されるままに車を降りると、建物の前の『清森療養所』と書かれた大きな門が目に入った。



草原の広がる田舎町にポツリと佇むその真っ白な建物は、ただ静かで、時折鳥のさえずりが聞こえてくるだけだ。



なんて穏やかで閑散とした場所なんだろうと、周りを見渡しながら薫さんの後を着いていく。



薫さんは慣れたように、その建物に入って行き、広いエントランスホールの受付けの人と少し言葉を交わした。



そして、あたしに手招きをし、エレベーターに乗り込んだ。



「ここね、母がいる療養所なの」



突然言った薫さんの言葉に、「えっ!?」と思わず声を上げてしまった。



「お母さまが……?」


「そう。永都が亡くなってから、心を病んで、この療養所で過ごしてるの」


薫さんがそう言ったと同時に、エレベーターの扉が開いた。