甘い旋律で狂わせて

***

「あの……いったい、どこに向かってるんですか?」


薫さんの車の助手席にすわるあたしは、困惑しながらおそるおそる尋ねた。



薫さんはただ黙ったままハンドルを握り、「もう少しで着くわ」とほほ笑む。


どこへ行くとも言わない薫さんに、あたしは仕方なくため息を飲み、窓の外を眺めた。




都会から少しずつ離れて行くにつれて、窓から見える景色は色を変えていく。


低い山々を超え、トンネルをくぐり抜け

そして


やがて車が辿り着いた場所は


低い山々に囲まれ、緑がいっぱいに薫る

穏やかな草原にポツリと建つ旅館のような建物だった。