「あれ、花音ちゃん。今日は一人?」


バーカウンターに現れた玲さんに、軽く会釈をする。


「今日はネオはいないよ?」


そう言ってピアノの方に目を向けた玲さんに、あたしは「わかってます」と頷いた。



お客さんが少ない平日は、ネオはほとんどここに弾きに来なくなったことを、あたしは知っていた。




だからこそ、ここに足が向いたんだと思う。



今は、ネオの顔を見ることなんてできない。