先生は音楽教室でピアノ講師をしながら、あたしが通う音大で教授の助手をしていた。
日本では注目されつつある若手ピアニストで、将来を期待されていた永都先生。
ルックスも、背が高くて顔立ちが整ってて、きっちりしたスーツが似合う品のある大人の男性。
大学の生徒の中にはファンがたくさんいた。
あたしも、その中の一人だった。
だけど、本格的にコンクールに出場して音楽活動に力を入れるため、先生はもう間もなく講師も大学の助手もやめようとしていた。
もう……先生と一緒にいられる時間は、ごくわずかだった。
「次のコンクールで、おまえを教えるの最後だな」
ふとつぶやいた先生の言葉に、あたしはハッと顔を上げた。
長い前髪から覗く透明な瞳が、あたしをまっすぐに見つめている。
「曲は前言ってたのでいいのか?」
「ああ……ラ・カンパネラ?」
あたしは少し視線を落とした。
「……やっぱり他のがいいな。あたしには難しすぎる」
自信なさげなあたしの声に、先生はフッとわずかに微笑んだ。
そして立ちあがり、うつむくあたしの肩をポンと叩いた。
日本では注目されつつある若手ピアニストで、将来を期待されていた永都先生。
ルックスも、背が高くて顔立ちが整ってて、きっちりしたスーツが似合う品のある大人の男性。
大学の生徒の中にはファンがたくさんいた。
あたしも、その中の一人だった。
だけど、本格的にコンクールに出場して音楽活動に力を入れるため、先生はもう間もなく講師も大学の助手もやめようとしていた。
もう……先生と一緒にいられる時間は、ごくわずかだった。
「次のコンクールで、おまえを教えるの最後だな」
ふとつぶやいた先生の言葉に、あたしはハッと顔を上げた。
長い前髪から覗く透明な瞳が、あたしをまっすぐに見つめている。
「曲は前言ってたのでいいのか?」
「ああ……ラ・カンパネラ?」
あたしは少し視線を落とした。
「……やっぱり他のがいいな。あたしには難しすぎる」
自信なさげなあたしの声に、先生はフッとわずかに微笑んだ。
そして立ちあがり、うつむくあたしの肩をポンと叩いた。

