甘い旋律で狂わせて

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小さいころからピアノに親しんでいたあたしは

18歳の時、音大に進学した。


特に、ピアニストになろうとか、そういう思いで音大に進学を決めたわけじゃなかった。


あたしが音大に通おうと思った理由、それは……。






「そう、そこはモデラート。もっと滑らかに…流れるように。」


鍵盤に向かうあたしの耳元に、柔らかな風が吹く。


耳をくすぐる優しい声に、あたしの指は速度を増していく。


「はい、そこまで!」