甘い旋律で狂わせて

「ここはピアノの生演奏があるんだよな。たしか花音は昔ピアノやってたろ?こういうところ来るの好きなんじゃない?」


悠貴はそう言って、案内された窓際の席についた。


あたしもそわそわしながら、イスにすわる。



この席はピアノからは少し遠い。


週末だけあって、前来たときよりも人が多いし、あのピアノがある場所からはここまで見えないかもしれない。




あたしはそんなことばかり考えて、出てくる料理の味を楽しむ余裕さえなかった。



「花音は音大に通ってたんだよな?」


料理を口に運びながら、悠貴はあたしの顔を覗き込む。



「え……ええ、通ってたわよ。中退したけどね」


「中退?そうだったのか」



知らなかった、という顔で悠貴はグラスの水を口に含んだ。