甘い旋律で狂わせて

歩を進めるごとに、近づいてくる大きな船。


煌びやかにライトアップされたそれが、暗い海に浮かんでいる。



はやる鼓動を沈めるように、あたしは胸をおさえながら歩いた。



船に乗り込めばあの日と同じように、華やかなレストランフロアーがあたしたちを迎えてくれる。




どうしよう。


もう、引き返せない。



もし、ネオに出会ってしまったら

あたしはどんな顔をすればいい?



蒼白になっていく顔を隠すようにうつむきながら歩くと


踏みこんだフロアーの先に、光沢ある黒いグランドピアノがあった……。