甘い旋律で狂わせて

目に映る、お母さんの哀しげな顔。

あたしはそれ以上の言葉を拒むように、手に持っていた雑誌を床に放り投げた。


「違う……違うよ!あたしは幸せよ。結婚して、ちゃんと幸せになれる。」


立ちあがって、大声でお母さんに言った。



あたしを見つめるお母さんの瞳は、すべてを見据えているようで。


耐えきれなくなって、とうとうあたしはリビングを飛び出して。

大きな音をたてて扉をしめ、自分の部屋に駆け込んだ。



……もう、そのことは考えたくなかった。


考えなければ、きっと忘れられたのに。



ただ前に向かって歩きたかった。

過去は振り返りたくなかった。


もしかしたら、すべてそのために、

あたしは結婚を決めたのかもしれない。



ベッドにゆっくりと腰をかけながら、部屋の片隅に目をやった。