渋々起き上がったこの学校の保健医、南さんは頬っぺたに机の跡を残したまま不機嫌に口を開いた。
「また外で寝てたのか、この不良が」
「あんたが言えた台詞じゃないでしょーよ」
ルックスと風貌だけはピカイチな……ってルックスも風貌も同じ意味か。つまりは見た目だけはイケメンな南さんは、女子にモテる。
でも俺よりも遥かに残念な人種だ。
「それより冷えピタが欲しい」
「いかん、ニコチンが足りない」
「会話する気ないでしょ先生」
「する気はある、ただニコチンが足りない」
普段は自然とボケ側に回る俺も(不可抗力だ)、この保健医といる時は突っ込み側に回ざるを選ない。
南さんも突っ込みも、疲れるから好きじゃない。ダブルで面倒臭い。
「一本吸わせてくれ、話はそれからだ」
話も何も冷えピタ一枚くれればいいのだ。あと学校で煙草って……ってもう、だめだ。疲れた。
俺は毎日を平凡に過ごしたいだけなのに、今日はやけに怠い。
あ、風邪ひいてるからか。


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