「……っくしゅん!」
ズビ、と鼻を啜る。
最悪だ、あんなとこで寝てたから風邪をひいてしまった。なんだか身体が熱い、なのに寒い。わけわからん。
でも残念ながら俺の辞書に「自業自得」なんて難しい言葉は載っていなかった。
「あ~、とりあえず冷えピタ貰って~」
そしたら帰る。
丁度のタイミングで下校時刻を知らせる鐘が鳴った。どこからともなく授業から解放された生徒達の声がする。
マフラーを巻き直して、俺は保健室に向かった。
* * *
保健室の扉をガラリと開く。見回せば、黄色の頭が机に転がっている。
中は静かだった。
それもそのはず、保健医は机に突っ伏せて爆睡していた。
「南さーん」
ぽかぽかと暖かい陽射しで橙色に輝く髪の毛を引っ張る。相変わらずふざけた髪の色だ。
「起きてください~、そんで冷えピタちょうだい」
「ん…なんだよ、邪魔すんなよ」
「職務放棄って言葉知ってる、先生?」
俺でも知ってるのにね。全くだらしない先生だ。


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