会話も、年上となると敬語を使わないといけないから少しめんどくさい。
大して弾まない会話を嬉しそうに続ける宮瀬さんの声をBGMにして、外の景色を眺める。
山田達もすかさず会話に入り混じり、そろそろ俺は黙ってもよさそうだ。
店についたら、宮瀬さんみたいな子があと3人もいて、沢山話さなきゃいけないのか。
少し憂鬱だ。
「なんか、夏目くんとは気が合いそう」
ふふふ、と笑う宮瀬さん。
――そういえば、有馬さんにも同じことを言われたな。
目まぐるしく変わる外の風景を目で流しながら、俺はふと有馬さんのことを思い出した。
何故急に思い出したのかは分からないけれど、真っ白な靡く髪と、赤いカーディガンが脳裏を横切る。
考えて見れば、有馬さんも年上だ。そして宮瀬さんの何倍も普通じゃない。
だけど、不思議と会話は続くのだ。
彼女は宇宙人なので、何故かとは思わないけれど。
「会議、出ときゃ良かった」
「なんか言ったか夏目?」
「んー、なんでもない」
呟いた言葉は、山田達の賑やかな声に掻き消された。


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