藤本の後ろに続いて校門まで歩けば、そこには一台の赤い普通車と、茶髪の女の子が立っていた。
その横には池田と山田もいる。
「藤本くんと夏目くんだよね?今日はよろしく」
ニコリと可愛らしい笑顔を見せた大学生は、俺達を車へ乗せるとさっそく目的地に向かって走り出した。
車の中は良い匂いがした。お菓子とかの甘い匂いとは違う、香水の香りだ。
もっとお姉さん的なのを想像していたが、まだ1年生なんだろう。思ったより普通の女の子だ。
名前は宮瀬さんというらしい。助手席を死守した山田がさっき聞いていた。
もっとも、残念ながら俺が興味を示してるものは違うのだけど。
「夏目くん」
「――あ、はい」
ふと宮瀬さんに名前を呼ばれ、ミラー越しに一瞬だけ目が合った。
話しかけられるとは思っておらず、少し反応が遅れる。
「夏目くんってお菓子が好きなんだって?自分で作ったりもするの?」
「あー、まあ、ヒマな時にやったり、します」
「へえ、男の子なのにすごい!私も好きなんだ、お菓子作り!」
「そうなん、ですか」
嬉しいそうに笑う宮瀬さんは、可愛かった。
だけど、特に興味が沸くわけでもなかった。


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