有馬さんは宇宙人



 静まり返っていたのが嘘のように一気にざわつく教室内。視線が痛い。


「あー、えーと……」


 いくらマイペースな俺でも、さすがにどうしようかと考える。なんて答えたら有馬さんは大人しく帰るだろうか。

 いや、もう何を言ったところで手遅れなんだろうけど。

 だってクラスメートにとっては“噂の有馬さん”がいきなり2年の教室に現れ、俺に訳のわからない事を話しかけてきているのだ。

 噂好きのクラスメートが、これをネタにしない訳がない。

 「なんのこと?」と惚けてしまえば、もしかしたら言い逃れできるのかもしれない。“頭のおかしい有馬さん”がいつもの奇行をしでかし、俺が迷惑を被っている。

 そういうことにもできるだろう。

 むしろ惚けるなんて俺の基本技で、いつもだったらあっけらかんとそうしてる。 

 だけど、今は何故かそうしたくなかった。


「有馬さん、それ機密事項でしょ?明日の放課後基地に集合でどう?」


 もっともらしいことを言ってみる。へらりと笑えば、有馬さんは納得したのか一度大きく頷いた。


「それもそうだな。邪魔して悪かった、では失礼する」


 それだけいうと、またピシャンと扉が閉まり、銀色の残像だけが残った。