有馬さんは宇宙人



 午後一番の授業内容は数学だった。

 ヒマを持て余していると不服そうに池田がプリントを覗き込んできた。


「もう終わったの?」

「うん、ちょっと寝るわ」

「授業全然聞いてないくせに何故できる」


 理数系は好きでもないがそんなに嫌いでもない。

 国語や英語なんかは自分の意見を考えるのが面倒だし、歴史なんかは如何せん興味がないので覚わらない。

 それと比べて数学と理科は答えも決まってて、公式さえ知ってればあとは手が勝手に動いてくれるのでとても楽だ。


「おやすみ」

「一生寝てなよ」


 池田の嫌味をスルーして、寝る態勢に入る。すぐに眠気はやってきて、あっという間に意識は浮上しかけた。

 そんな時―――


「夏目!」


 静かだった教室にピシャン!と派手に扉が開く音と、大声で俺を呼ぶ聞き覚えのある声が響いた。

 いっそう静まり返る室内。


「先程はつい流されてしまったが、やはり私には貴様が200年後の会議に出れるとは思えない!貴様が出れると思う根拠は何なのだ!?」


 嫌な予感はすでに予感ではなく。

 顔を上げれば、口あんぐりなクラスメートの視線を浴びる至って真顔な有馬さんがこちらを見ていた。

 さようなら、俺の平凡。