彼女は相変わらずジョウロと戯れているので、そのままにしておいた。
渡り廊下は人気もなくて寒い。
「へっくしょん!」
一つのくしゃみと同時に昼休み終了を告げる鐘がなった。
いくら暖かいとはいえ、冬には変わりない。やはり身体に堪える。
もう中庭はやめようか。
そうとなると、次に有馬さんと会う時はいつになるんだろう。明日だろうか、それとももう二度と会わないだろうか。
どちらでも構わないのだけど。
「夏目、おせーよ!」
「もう授業始まっとるで!」
教室の扉を開ければ、山田と藤本に声をかけられる。
そして一瞬みんなの視線を浴びるが、俺だと分かった途端「なんだお前か」とすぐに注目はなくなった。
「いやあ、急いだんだけどな」
「微塵も走っとらんくせに、よお言うわ」
気の抜けた言葉を返せば、関西弁にすぐ突っ込まれる。
教師も慣れた様子で「今日も夏目は遅刻……っと」なんて呟きながら出席簿にチェックをしていた。
それを横目に自分の席につき、呆れた顔で俺を見る隣の池田にこそりと声をかける。
「俺の信頼度が見当たらない気がする」
「日頃の行いのせいだよ」
そんな。僕は真面目に生きてるだけなのに。自分なりに。


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