「おっと、大切なことを忘れていた」
しばらくの沈黙のあと、有馬さんがふと顔を上げた。
有馬さんの手元には無残に折れたジョウロとガムテープ。ガムテープはさっき有馬さんの制服のポケットから現れた。
ちゃんと直すあたり常識的な意味で意外と真面目なのかもしれない。
その光景を横目で眺めていた俺は、有馬さんの次の言葉を待つ。
どうせろくなことではないことはわかってるので、期待などはしていない。
「今日の放課後、基地で会議があるからな」
「……参加しろと?」
「当たり前だ」
基地とは保健室のことだろう。
だが俺は残念ながらケーキを食べに行くので参加出来ない。
「残念ながら、放課後は合コンだから行けません」
合コンって言葉きっと知らないから大丈夫だろうと正直に言った。別に卑しいことではない、ケーキが食える楽しい会だ。
すると有馬さんは一瞬固まると、すぐに軽蔑するような視線を俺に寄越した。某ビームが飛び出しそうな攻撃的構えのおまけ付きで。
「女の下半身からウイルスを貰って来る気か」
完全に合コンの意味を履き違えている。


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