有馬さんは少し真面目な顔をして、口を開いた。
「私は地球を守るために遠い星から来たのだ」
「エイリアンから?」
「ああ、地球は宇宙規模ではまだ赤ん坊のような星だからな、狙われやすい。だから私が寄越された」
「へえ、有馬さんも大変なんだね」
彼女の真剣に語る横顔が、少しカッコよくて見惚れてしまった。
内容に関しては8割は聞き流しているので何ともいえないが、あと200年くらい前の地球に来ていれば有馬さんは立派な侍になっている気がした。
ふいに冷たい風が吹き付けて、身体を縮こめる。隣を見れば有馬さんもそうしていた。
宇宙人にも地球の冬は辛いのかな。
「それはなんだ?武器なのか?」
有馬さんが長い指でさしたのは、俺が今しがた巻き直したマフラーだった。
彼女の中では何処までが知識の範囲内で、何処からが未知なんだろう。
「ああ、うん。寒さという手強いエイリアンから身を守るためのね」
「そうか、それはすごいな!」
何がすごいんだろう。
そう思ったけれど、有馬さんが目をキラキラさせてマフラーを見つめてくるものだから、口にはしなかった。


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