「で、なんだっけ」
「冷えピタ」
ニコチンを摂取して満足げに白い煙りを口から吐き出した南さんは、瞳だけをこちらに寄越す。
様になっているところが少し腹立たしい。
「そこの引き出しに入ってるから持って行っていいぞ」
顎で指された薬品棚の引き出しを開ければ、お目当ての品が綺麗に整列して並んでいた。
ここまで来るのに無駄な時間を要しすぎた。
「そうちゃーく、と」
ピタリとおでこに貼れば、冷えてないそれは生温く何とも言えない感覚がした。
まあでも無いよかマシだ。
「南さん、ありがと。さようなら」
毎日手ぶらな俺は教室に荷物を取りにいく必要もない。
さて帰ろう、と扉に手をかけた時だった。
──ガラガラ!
「来てやったぞ、ニコチン中毒!」
開いた扉の目の前で仁王立ちするのは、本日二度目の有馬さんだった。


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