ホテルを出ると、いつもの風景。





「・・・おい。」




都会といわれるこの街で、似てる人はたくさんいる。







声が似てる人なんて多い。


「・・・蒼商事、製造部。」




あたしの会社の名前と部署を知っているなんてことはない。





空耳だろう。


「・・・おい。」





腕を捕まれた。


振り払うしかないのかもしれない。




「止めて悪ぃな。」



低い声があたしの耳に届く。






「ちょっと、こっち入れるか?」








断れないのは、この声が社長に似ているから。