「なーに逃げてんの真ー子?」
完璧すぎる笑顔を浮かべながら全力疾走する私の横に簡単に並ぶ悪魔。
「(や、殺られる…!!)」
だらだらと額だけじゃなく全身を伝う冷や汗。ゴックリ、生唾を飲み込む音が響いた。
いくら私が無我夢中に走って逃げても逃げても、千駿は嘲笑うかのように追い付いて隣に並んでくる。
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―――――――…
そんな調子で。
なんとか教室に逃げ込んだ私は汗だくになっていた。冬なのに息を切らし額を濡らす私を見るクラスメートの視線は痛い。
「おはよう、梅澤さん。」
と。
肩を軽く叩くようにして挨拶をしてきた人物に私も挨拶を返す。
「おは、よう…、武居くん。」
「すごい息切れ。澄江と追いかけっこすごかったね。」
「み、見てたの…!?」
なんと恥ずかしい!顔が紅潮してしまうのと一緒に息も整えようと深呼吸をする私に。彼は素敵な笑顔の癒やしを鈍痛に変える。


