その目、その声。





――――…橙色の空が藍色へと変わってきた頃。私はふと思い出し、希月さんの名を呼んだ。

それに眼鏡をかけパソコンに向かっていた希月さんは「ん?」と緩く笑って私を見る。



「どうしたの?」

「私、着替えとか何もないんですけど。」


学校からそのまま連れてこられた私は当然ながら何も持ってきていない。学校指定のバッグの中に入っているのは教科書とノートと財布と携帯だけ。



「別に、いらないんじゃない?」

「馬鹿言わないで下さい。制服で過ごせって言うんですか?」


それなら帰ると溜息混じりに呟けば、希月さんはくすくすと(うざい)音をもらしながらダーメ、と茶目っ気いっぱいに笑う。

この男を今すぐ目の前から消してしまいたい。顔だけなら綺麗だけど性格は最悪、どす黒い。