「入ってればいいのに。」

「それが出来ないから待ってたんです。」


何それ、と笑う希月さんを上目に見上げる。口元に微笑を浮かべる彼は私が指しっぱなしにしていた鍵を慣れた手つきで回し。



がチャリと開錠した音が聞こえ、それと同時に希月さんは私を見下ろす。


「入りなよ。」



その言葉で、私はゆっくりと立ち上がり希月さんの後に着いて玄関へと足を踏み入れた。

瞬間、鼻孔をくすぐる甘めの香りにああ希月さんの部屋に来たんだと改めて感じる。



はたと前を見れば、ずんずん奥へ進んでいく後ろ姿はもうリビングへと消えてしまっていて。私も慌てて靴を脱ぎリビングへと駆ける。


「なあ真子ー。」



リビングに入った、私の名を呼ぶ希月さんはスーツをソファーへと脱ぎ捨てネクタイを外していた。