助手席側のウィンドーが閉まり、車内は密室と化す。
この瞬間に、息苦しさを感じるのはいつものことだけど。そんなものは慣れてしまえばどうって事ない。
「どこか行きたい?」
「いえ、家で。」
シートベルトを締めながらそう言った私に、隣でハンドルを握る優男は「積極的だね」と意味不明なことを呟いた。まあ、当然スルーの方向を決め込む。
「真子ちゃんも、大胆だよねえ。」
「何を言ってるのか、理解できません。」
「え?早く家に帰りたいなんて、俺と熱を共有したいって言ってるようにしか聞こえな――――」
「わあああ…!!!」
何言ってるんだ何言ってるんだこの人、千駿以上に馬鹿なんじゃないか!
くすくすと笑い声をもらす男の目は、楽しいと言わんばかりに湾曲を描いている。


