その目、その声。




その後、希月さんの後ろをついて歩くこと数秒。校門から少し離れた所に見慣れた黒い車が寄せられて停まっていた。



希月さんは、それの運転席に身を滑らすように乗り込む。

私は、これから何をすればいいのかは分かっているけど足が止まってしまって助手席のドアの前で佇む。



と。

エンジンがかかった音に次いで、ウィーンというウィンドーが下げられた音で私は視線を車内へと向けた。


「早く乗りなよ。」




そう笑う希月さんは、温厚に見える。…実際そうなのだけど、あまり手間取ることは好きじゃない。


だから、今この時も。
希月さんの目は優しげな声音とは裏腹に面倒くさそうなそれが伺える。

私はゆっくりとした動作で助手席のドアを開けると身を滑り込ませた。