「真ー子ちゃん。」
その、やけにロートーンで甘ったるいような声に、私の足裏は地面に張り付き動かなくなる。
振り返った視線の先にいる人物は、見なくても分かる。
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本日の全ての授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り。
教室内はがやがやと、部活へ行く生徒や足早に帰宅していく生徒と様々で。私も後者に相当する。
波はさっき彼氏が迎えに来て、一番に教室を出て行った。波の彼氏は大学生のイケメン。
凄いっていうのが、私の率直な感想。
「(……、)」
私は、教室内やドアの先の廊下へと目をやるが。
いつも来るはずの男の姿はない。帰ったのか、答えを導き出した私は机の横に掛けてあった鞄を自分の肩に掛け。
教室を後にした。