目の前にいる波は、困ったような笑みを唇で描いているだけで口自体はまったく動いていない。
「ねえ、誰のこと?」
あら、気のせいかな。
声、私の真後ろから聞こえるんだけど。それも波の凛々しいようなちょっとハスキーな声じゃなくて、低めの、甘ったるい声。
ゆっくり、ゆっくり振り返って見。私の顔は血の気が引いて真っ青になり絶句した。
「俺、十分紳士でしょ。」
「(あ、悪魔…!!!)」
――――悪魔こと、千駿はニヤリと口角を引き上げる。
こ、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。悪魔だ本当に、もう泣きたいんですけど……?
くすくすと笑う千駿は、゙それ゙に見えて仕方なかった。だって、冗談抜きで黒い羽根が奴の背後に見えるんだから!
てか、どうしてこの男は私の背後に立っているんだ。


