「梅澤さん。」
と。
頭上から私の名を呼ぶ優しいボイス。ゆっくりとした動作でそちらに顔を向ければ、隣の席の
「武居くん、何?」
武居くんは千駿みたいに胡散臭さを感じない、穏やかな微笑みを浮かべながら私を見下ろして。
はい、と。プリントを手渡してくれた。
「それ、この前の授業のやつと委員のね。」
「あ、どうもありがとう。」
いいえと言って武居くんはまた微笑むと、踵を返して教室を出て行った。なんと大人。そして爽やか&クールボーイなんだろうか…!
何故か感動を覚えた私は見えなくなった今も、武居くんが出て行ったドアの先を見つめていた。
「え、…まさか武居?」
そんな声が聞こえて、視線を向けた私は数秒瞬きを繰り返した。