あまりの近さに一歩後退しようとするが。
逃がさんと言うよう、千駿は私の腰に腕を回してきたのだ。接近した距離に、びくっと反応する私を見て、やけに満足げに口角を引き上げる千駿。
――ああ、ムカつく。
「っ、…離せ…!」
「むーりー。」
「あんたの方が無理だから!」
「聞こえないなあ。」
絶対嘘!!!
この距離で聞こえないなんて、耳が悪いどころじゃないぞ。
茶目っ気を含んだ口調はどう考えても私を挑発してるそれで。苛々と羞恥が積もりに積もって
腹部に、こう…、
ボスっと。
拳をいれてしまった。
「っ……、」
「(…あ、ヤバい。)」
悶える幼なじみを見てそう思った時には既に遅し。


