カチカチ、と。
私がいるリビングには時計の秒針の音しか聞こえてこない。
ソファに膝を抱えるようにして座り、ブランケットで自身の身体を包み込む。
と。
ピンポーン――…
やけに場違いで軽快なそれが響き渡った。
面倒くさいとは思いながらも、ふらふらと覚束ない足取りで玄関まで向かう。うっかりブランケットの端を掴んだままだが、まあ、いっか。
鍵を開け、ゆっくりと開いたドアの先。
「おはよう、真子。」
「……。」
昨日振りの男がいつもと何ら変わらない笑顔を張り付けて立っていた。
さらに頭が痛くなりそうだ。
「…何してんの。」
「迎えに来たんだけど……、どうしたの?」
千駿は、私の足下から順に視線を上げていき。そう、問いかけてきた。