「大丈夫だよ。」
「…、」
「俺を、お兄ちゃんって呼んでくれる？」
そう囁いて微笑み、首を傾げた俺に少女は満面の笑みをその顔一杯に広げて大きく頷いた。
俺と姉さんに、血の繋がりはない。姉弟だけれど、どんなに努力しても血の繋がったホンモノの姉弟にはなれない。
そんな姉さんの実の娘、真子とだってホンモノの親戚ではない。
……そんな俺を、叔父として、兄として接してくれた真子が。
可愛くて可愛くて、愛しくて。仕方がなかった。
―――さっきまで、明るかった姉さんも義父さんが眠る棺を前にすると表情を苦痛に歪ませた。
「……父さん、」
それを後ろから見つめる俺の人差し指を握る小さな手の主に、俺は視線を送る。
「…お母さん、何してるの？」
不安そうな目が、俺を映す。少女の頭を撫で、俺は微笑んで言った。
「姉さんはね、お父さんにさよならしてるんだ。」
「…お祖父ちゃん？」
「そう、お祖父ちゃん。姉さんと…」
姉さんと、俺の、
―――――ﾞ父さんﾞに。
