宜しくね、と言った俺に小さな彼女は上目で俺を見つめ控えめに言の葉を紡いだ。
「お兄ちゃん、おじさんって年じゃないよ。お兄ちゃんだよ。」
「…。」
「…真子、兄妹いないから。おじさんじゃなくて、お兄ちゃんがいい。」
ぽかんと少女を見下ろす俺。数秒の沈黙を置いて、糸が切れたように吹き出し声を上げて笑い出す姉さんは俺の髪を乱すように頭を撫でた。
クックッと笑いを堪えながらも肩を揺らす姉さんを緩く睨み。
「…笑わなくても、いいじゃないんですか?」
「ふふ、ごめんごめん。確かにオジサンって年じゃないわよね?」
「……。」
「………お母さん、」
と。
少女の小さな声と控えめな視線が姉さんを呼んだ。2人同時に少女へと視線を降ろせば、不安げな目が俺達を一生懸命に見上げていた。
「どうしたの、真子?」
「…真子、何かいけないこと言ったの?」
「そんなことないわ。希月にも聞いてごらん。」
そう言い、にっこりと笑った姉さんを見て少し安心した顔をした少女だったが。俺を見る顔にはやはり緊張を窺えた。
俺はそんな少女の頭にそっと手を置いて、細く艶のある髪を優しく撫でた。


